「求人票もスカウト文面も見直したのに、応募が増えない」「面接では盛り上がったのに、最後は他社に決まってしまう」。中途採用の現場でよく聞くお悩みです。
私たち有限会社北麓(HOKUROKU)は、東京・渋谷区を拠点に、TVCMから採用動画、縦型ショートドラマまで10,000本以上の映像制作に携わってきました。代表自身がディレクター・プロデューサー・エディターとして現場に立ち、企画から編集まで一貫して担当しています。
この記事では、その現場で積み上げてきた知見をもとに、中途採用動画の作り方を企画設計から公開後の運用まで通してお伝えします。あわせて、即戦力人材が「本当に知りたいこと」を整理する方法、そして公開前に必ず確認しておきたい法務上のポイントもまとめました。読み終えたときに、自社の企画のたたき台をご自身で書ける状態になることを目指しています。
中途採用動画が効く理由|新卒採用向けとは前提がまるで違う
はじめに、言葉の定義をそろえておきます。厚生労働省は「中途採用」を、新規学卒等採用者以外の雇入れと整理しています(※3)。つまり中途採用動画とは、すでに社会人経験を持つ人に向けてつくる採用動画のことです。
転職者は新卒入職者の約4倍いる
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和6年(2024年)1年間の転職入職者数は約492万人でした。同じ年の新規学卒者の入職者数は約120万人ですから、転職して入職した人は新卒入職者のおよそ4倍にのぼります(※1)(※2)。
さらに、正社員を中心とする一般労働者に限っても、転職入職者数は約305万人です(※1)(※2)。中途採用は、もはや新卒採用の補完ではなく、人材確保の主戦場になっているといえます。
中途採用の候補者は「三つの不安」を抱えて動画を見ている
新卒採用動画と中途採用動画の決定的な違いは、視聴者が比較対象を持っていることです。候補者はすでにどこかで働いており、「今の会社」という具体的な比較対象を持ったまま動画を見ています。
同じ調査で、転職入職者が前職を辞めた理由を見ると、その関心のありかが読み取れます。男性では、「その他の個人的理由」を除くと「定年・契約期間の満了」14.1%が最も多く、次いで「給料等収入が少なかった」10.1%でした。女性では、「その他の個人的理由」を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%となっています(※1)(※2)。
注目したいのは変化のほうです。男性では「会社の将来が不安だった」が前年より2.2ポイント上昇し、「その他の個人的理由」を除けば最も上昇幅の大きい理由になりました。女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が1.7ポイント上昇しています(※1)(※2)。
ここから、中途採用の候補者が抱えている不安は、おおむね次の三つに整理できます。
- 待遇の不安:本当に今より条件が良くなるのか
- 働き方の不安:労働時間や休日は実態としてどうなのか
- 将来の不安:この会社は数年後も伸びているのか
ちなみに、転職した人の賃金がどう変わったかを見ると、前職と比べて「増加」した割合は40.5%、「減少」は29.4%、「変わらない」は28.4%でした(※1)(※2)。増える人が多数派とはいえ、3割近くは下がっているということです。候補者が待遇面で慎重になるのは当然の反応だといえます。
新卒向けの採用動画でよく使われる「若手が笑顔で働く様子」「オフィスの明るい雰囲気」は、この三つの不安のどれにも答えていません。中途採用動画で最初に設計すべきなのは、雰囲気ではなく、この不安の解消です。
中途採用動画の主な種類と使い分け
ひとくちに採用動画といっても、形式によって答えられる不安が異なります。中途採用でよく使われる形式を整理すると、次のようになります。
| 種類 | 主に答えられる不安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 社員インタビュー | 働き方・将来 | 中途入社した人のリアルな声を届けたいとき |
| 一日密着・業務フロー紹介 | 働き方 | 職務内容が外から見えにくい職種のとき |
| 職場・オフィス紹介 | 働き方 | 勤務環境そのものが訴求点になるとき |
| 経営者メッセージ | 将来 | 事業の方向性や成長性を伝えたいとき |
| 社員同士の対談・座談会 | 働き方・人間関係 | チームの距離感を見せたいとき |
| ショートドラマ形式 | 待遇・働き方 | SNSでの拡散を狙うとき |
中途採用でまず選ぶべきは、社員インタビューと一日密着の組み合わせです。前者は「どんな人と働くか」、後者は「実際に何をするのか」に答えられるため、候補者が抱く不安の大部分をカバーできます。
一方、経営者メッセージ単体は中途採用向けとしては弱くなりがちです。将来性への不安には答えられますが、日々の業務や人間関係については何も伝わらないためです。使うのであれば、他の形式と組み合わせることをおすすめします。
ショートドラマ形式は、SNSでの拡散を前提に、まだ転職を決めていない潜在層へ届けたいときに有効です。私たちも縦型ショートドラマの制作をお受けしていますが、中途採用の場合は「まず認知を広げるショートドラマ」と「応募直前に見てもらうインタビュー動画」を役割分担させる設計が現実的だと考えています。
即戦力人材が知りたいこと|三つの情報から設計する
「候補者が何を知りたいかは、聞いてみないとわからない」と思われるかもしれません。しかし、前章の三つの不安と、国が定めている情報公表の枠組みを重ね合わせると、かなり具体的な設計図が描けます。
中途採用の実績は、国が「見せるべき情報」と定めている
令和3年(2021年)4月1日から、常時雇用する労働者数が301人以上の企業には、直近3事業年度の各年度について、採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表することが義務づけられています。公表はおおむね年に1回、公表した日を明らかにしたうえで、求職者が容易に閲覧できる形で行う必要があります(※3)(※4)。
自社が300人以下で対象外だとしても、この制度は重要な示唆を含んでいます。国が「求職者が容易に閲覧できる形で見せるべき」と定めるほど、中途採用の実績は候補者の判断材料になっているということです。
そしてこの制度が求めているのは比率という「数字」だけです。候補者が本当に知りたい中身までは、企業が自分で伝えるしかありません。そこを担うのが採用動画です。
当社が設計図として使っている三つの情報
前章で見た三つの不安に答えるために、当社が中途採用動画の企画で必ず埋めるようにしているのが、次の三項目です。
| 項目 | 具体的に示すもの |
|---|---|
| 中途採用者に求める人材像や職務内容の詳細 | 必要なスキル・経歴・資格、配属部門、実際の業務内容・業務フロー、応募者に求める志向性・人物像 |
| 中途採用者の処遇及びキャリアパスに関する情報 | 賃金水準、配置転換、勤務地、評価方法及び昇格条件、出産・育児・介護・復職等に係る支援制度、休暇その他の福利厚生 |
| 採用後の人材育成に関する情報 | 資格取得に関する支援、研修期間、中長期的な人材育成のロードマップ、実地研修やマンツーマン研修などの具体的な研修内容や方法 |
三つの不安と、この三項目はきれいに対応しています。人材像と職務内容は「働き方の不安」に、処遇とキャリアパスは「待遇の不安」に、そして人材育成とキャリアのロードマップは「将来の不安」に答えるものです。
動画のシーンに翻訳すると、次のようになります。
- 人材像と職務内容 → 実際の業務フローを、担当者の一日を追う形で見せる。会議、顧客対応、使っているツールの画面まで具体的に映す
- 処遇とキャリアパス → 中途入社した社員が、入社時と現在でどう役割が変わったかを本人の言葉で語ってもらう
- 人材育成 → 入社直後の数か月に何をしたのかを、実際の研修風景やOJTの様子とともに見せる
この三つが入っていない中途採用動画は、どれだけ映像が美しくても、候補者の意思決定材料にはなりにくくなります。逆にいえば、この三つさえ具体的に映っていれば、豪華な演出がなくても動画は機能します。
中途採用動画の作り方|企画から運用までの6ステップ
ここからは実際の作り方です。当社が中途採用動画の制作でたどっている手順を、そのまま公開します。
ステップ1:ゴールを「感情」で定義する
多くの企画は「応募数を増やす」というゴールから始まります。しかし私たちは、その手前に一つ工程を挟みます。「見終わったあとに、視聴者にどんな感情になっていてほしいか」を先に決めるのです。
中途採用動画であれば、たとえば「今の職場への不満が言語化されて、この会社なら解決できそうだと感じている」「転職への不安が一段下がって、話だけでも聞いてみたくなっている」といった状態です。当社ではこれを社内で「感情設計・逆算シート」と呼び、ゴールの感情を決めてから構成・演出・カット割りを逆算していきます。
このステップを飛ばすと、撮影の途中で「もっと会社の実績も入れたい」「社長のメッセージも足したい」と要素が増え続け、結果として誰にも刺さらない総花的な動画になります。
ステップ2:ターゲットを職種と経験年数まで絞る
「中途採用向け」という括りは広すぎます。営業職の30代前半と、エンジニアの40代では、知りたいことも不安も違います。
実務上は、直近で最も採りたい1職種・1レンジまで絞ることをおすすめしています。動画は1本で全職種をカバーしようとすると、抽象度が上がり、内容が薄くなりやすいからです。複数職種が必要な場合は、共通パート(会社・事業・カルチャー)と職種別パートを分けて設計し、1回の撮影から複数本を編集で切り分けます。
ステップ3:構成をブロックで組む
前章の三項目を軸に、次のようなブロック構成をベースにします。尺は用途によって変えますが、採用サイト掲載用であれば2〜3分が扱いやすい長さです。
| ブロック | 内容 | 目安の尺 |
|---|---|---|
| 冒頭 | 候補者の不安や関心に直接触れる問いかけ | 10〜15秒 |
| 事業 | 何で稼いでいる会社なのか、市場の中での位置づけ | 20〜30秒 |
| 職務 | 実際の一日の業務フロー | 40〜60秒 |
| 人 | 中途入社した社員のインタビュー | 40〜60秒 |
| 育成・処遇 | 入社後の立ち上がりと評価の仕組み | 20〜30秒 |
| 締め | 次の行動への導線 | 10〜15秒 |
このとき、社員インタビューのブロックは意図的に独立させておきます。理由は後述しますが、出演者が退職した場合に、そのブロックだけを差し替えられるようにするためです。
ステップ4:撮影は「答えを引き出す」設計にする
中途採用動画の撮影で最も難しいのは、社員の言葉から台本のにおいを消すことです。
私たちが実践しているのは、台本を読ませないことと、質問を二段構えにすることです。「入社の決め手は何でしたか」と聞くだけでは、多くの場合、用意してきた優等生の答えが返ってきます。そこから「では、入社前に一番不安だったことは何でしたか」「その不安は、実際どうなりましたか」と踏み込むと、その人にしか言えない具体的な言葉が出てきます。
当社では、ヒアリングに入った代表がそのまま撮影当日のインタビュアーを務めます。事前の打ち合わせで聞いた企業側の狙いを、現場で自分の言葉として質問に変換できるためです。企画者と撮影者が別の会社・別の担当者だと、この変換が伝言ゲームになり、当たり障りのない受け答えに寄りやすくなります。
私たちが現場で徹底しているのは、いきなり本題に入らないことと、聞き手の目線の前にカメラを置かないことの二つです。世間話から入り、カメラは脇に置く。それだけで、面接のような「用意した答え」ではなく、同僚に話すときの言葉が出てきます。中途採用の動画で欲しいのは、後者です。
ステップ5:1回の撮影から複数フォーマットへ展開する
撮影は、それ自体が最もコストのかかる工程です。だからこそ、撮影前の構成段階で展開先まで決めておきます。
- 採用サイト掲載用(横型・2〜3分)
- スカウトメール添付用(横型・60秒前後)
- SNS拡散用(縦型9:16・15〜60秒)
- 会社説明会・面接冒頭用(横型・90秒前後)
横型と縦型の両方で使えるフレーミングで撮っておけば、追加撮影なしでこれらを揃えられます。当社はTVCMの横型映像から縦型ショートドラマまで手がけてきたため、この設計は撮影前の絵コンテ段階で組み込んでいます。
ステップ6:公開後の活用先と効果の見方を決める
動画は公開して終わりではありません。制作費を回収できるかどうかは、公開後にどれだけの接点で使うかで決まります。
中途採用動画には、次のような活用先があります。公開前の段階で、どこで使うかを決めておいてください。
| 活用先 | 期待できる役割 | 推奨する尺 |
|---|---|---|
| 採用サイト・募集要項ページ | 応募前の不安解消 | 2〜3分 |
| スカウトメール・ダイレクトリクルーティング | 開封後の離脱防止 | 60秒前後 |
| 求人媒体の掲載ページ | 他社求人との差別化 | 60〜90秒 |
| SNS(縦型ショート) | 潜在層への認知拡大 | 15〜60秒 |
| 会社説明会・カジュアル面談の冒頭 | 説明の均質化と時間短縮 | 90秒前後 |
| 面接後のフォローメール | 内定承諾前の意思固め | 2〜3分 |
| 社員によるリファラル(紹介)時 | 紹介者の説明負担の軽減 | 60秒前後 |
このうち、見落とされがちなのが最後の二つです。中途採用は候補者の意思が最後まで揺れやすいため、面接後や内定後にもう一度見てもらう設計にしておくと、辞退の抑制に働きます。
そのうえで、効果の見方を決めます。中途採用動画は再生回数そのものが目的ではないため、次の指標を組み合わせて判断してください。
- 視聴維持率:どこで離脱しているか。冒頭15秒で大きく落ちているなら、導入が候補者の関心とずれています
- 視聴完了率:最後まで見た人の割合。業界共通の基準値はないため、自社の他コンテンツや前回制作分と比較して判断してください
- 動画ページからのエントリー率:動画を見た人が応募に進んだ割合
- スカウト返信率の変化:動画を添付した場合としない場合を比較する
- 面接での言及率:面接で「動画を見ました」と言われた回数。定性的ですが、実務では最も分かりやすい指標です
私たちがおすすめしているのは、まず4番と5番から見ることです。1番と2番は改善のヒントにはなりますが、採用の成果と直結しているのは、実際に候補者が動いたかどうかだからです。
最後に、更新のタイミングも決めておいてください。出演者の異動・退職、事業内容の変更、募集条件の変更が起きたときに誰が気づくのか。この担当者を決めていないと、実態と異なる動画が公開されたまま残りかねません。これは後述する法務上のリスクに直結します。
制作費用と期間の目安
社内で予算を通す際の参考として、一般的な目安をお伝えします。ただし、費用は撮影日数・出演者数・ロケ地の数・編集の作り込み度合いで大きく変わるため、あくまで幅としてご理解ください。
中途採用動画の場合、社員インタビュー中心で撮影1日、2〜3分の動画1本という構成が最も多く、この規模であれば数十万円台から検討できます。ここに、複数拠点での撮影、ドローンによる空撮、ナレーターやモデルのキャスティング、アニメーションによる図解などが加わると費用は上がっていきます。
期間については、企画・構成の設計に2〜3週間、撮影に1日、編集と修正に2〜3週間というのが標準的な進み方です。全体で1か月半から2か月を見ておくと余裕があります。
ただし、採用スケジュールの都合で急ぐ必要がある場合もあります。当社では代表自身が現場に入る少人数体制のため、判断と着手が速く、短納期のご相談にも対応しています。イベントの撮って出しで培った編集スピードが、この部分で生きています。
なお、費用を抑えたい場合に最も効果的なのは、撮影回数を減らすことです。ステップ5でお伝えしたとおり、1回の撮影から複数フォーマットへ展開する設計にしておけば、後から別の動画が必要になったときの追加費用を抑えられます。
即戦力に刺さるコンテンツ設計|私たちが現場で徹底している7つの原則
ここまでが手順です。ここからは、同じ手順で作っても差がつく部分、つまりコンテンツ設計の原則をお伝えします。
1. 冒頭10秒で「今の職場の話」をする
自社の紹介から始めないでください。候補者はまだ自社に興味がありません。「引き継ぎに追われて、提案する時間がない」といった、候補者が今まさに感じている状況から入ると、視聴が続きます。
2. 抽象語を固有名詞と数字に置き換える
「風通しの良い職場」「裁量が大きい」といった言葉は、候補者にとって情報量がゼロです。「入社3か月目に、この規模の案件を一人で担当した」というように、固有名詞と数字に置き換えます。中途採用の候補者は、抽象語の裏側を読む訓練を積んでいます。
3. うまくいかなかった話を一つ入れる
良いことしか語らない動画は、それ自体が疑いの対象になります。「入社当初はここでつまずいた」「今もこの部分は改善途中」という話が一つ入るだけで、他のすべての発言の信頼度が上がります。
4. 上司と同僚を同じ画面に映す
候補者が最も知りたいのは、一緒に働く人との距離感です。社員個人のインタビューだけでなく、実際の会議やちょっとした雑談の場面を押さえておくと、言葉より雄弁に人間関係が伝わります。
5. 演出を「盛る」方向に使わない
映像は簡単に印象を良くできます。しかしそれは中途採用では逆効果です。入社後のギャップは早期離職に直結し、後述するとおり法務上のリスクにもなります。私たちが演出を使うのは、実態を魅力的に見せるためではなく、実態を正確に伝わりやすくするためです。
6. 出演者の退職を前提に構成する
中途採用動画で最も多いトラブルは、出演した社員が退職して動画を公開できなくなることです。当社では撮影前の構成段階で、インタビューパートを独立したブロックにし、そこだけを差し替えても全体が成立するように設計しています。ナレーションやテロップで文脈をつなぐ構造にしておけば、後日の差し替え撮影は最小限で済みます。
7. スピードを設計に織り込む
中途採用の候補者は、複数社を並行して受けています。スカウトを送るタイミングに動画が間に合わなければ、その動画の価値は大きく下がります。私たちがイベントの「撮って出し」(当日撮影・当日編集・当日上映)で培ってきたのは、現場でどのカットを使うかを即断する判断力です。この経験は、そのまま中途採用動画の短納期対応に生きています。
実際に当社でも、納品後の出演者の退職に対応した案件があります。長く使う動画は再撮影、公開範囲が限られる動画は該当シーンのカットで対応しました。ブロック構成にしてあれば、全編の作り直しにはなりません。
中途採用動画の成功事例と、成果につながらない動画の共通点
当社の中途採用領域での実績には、小売・サービス業の採用動画(SNS向けショート動画まで展開)、飲食業の採用動画、商社系企業の採用動画などがあります。個別の課題や成果の詳細は守秘の範囲で、お打ち合わせの際にお伝えしています。ここでは、これまで多くの中途採用動画を見てきたなかで、成果につながりにくい動画に共通していた点を整理します。
社長メッセージだけで完結している
経営者の言葉は、事業の将来性を伝えるうえで欠かせません。しかしそれだけでは、候補者が抱く待遇と働き方の不安に答えられていません。経営者インタビューを軸にする場合でも、実際に働く社員の声と業務風景を必ず組み合わせてください。
職場の映像が「きれいな瞬間」しかない
撮影日に合わせてオフィスを整え、誰もデスクにいない状態で撮った映像は、かえって実態への疑念を生みます。中途採用の候補者は、職場を見る目を持っています。多少の雑然さが映っているほうが、情報としての信頼性は上がります。
新卒採用向けの動画を流用している
制作費を抑えるために新卒向け動画を転用するケースがありますが、十分に機能しないことが多くあります。新卒向けの「一緒に成長しよう」というメッセージは、すでに専門性を持つ候補者には響きにくいためです。共通で使えるのは、事業内容の説明パートまでと考えたほうがよいでしょう。
尺が長すぎる
「せっかく撮ったので全部入れたい」という理由で5分を超える動画になると、視聴完了率は大きく下がります。伝えたいことが多い場合は、1本を長くするのではなく、テーマごとに分割してください。
公開先が採用サイトの1か所だけ
前章でお伝えしたとおり、中途採用動画には多くの活用先があります。採用サイトに置くだけでは、そもそも見てもらえる母数が限られます。スカウト、求人媒体、面談冒頭など、候補者と接触するすべての場面で使ってこそ、投資が回収できます。
公開後、一度も更新されていない
募集条件や組織体制が変わっているのに、動画だけが数年前のまま残っている状態です。候補者の信頼を損ねるだけでなく、次章でお伝えする法務上のリスクにも直結します。
公開前に必ず確認したい、法務と運用のチェックポイント
中途採用動画は求職者の意思決定に直接影響するコンテンツです。制作の最終段階では、必ず次の点をご確認ください。ここは映像のクオリティ以前の、企業の信頼に関わる部分です。
1. 実態と異なる表現をしない
令和4年(2022年)10月1日に施行された改正職業安定法では、求人企業に対して、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないこと、そして求人情報を正確・最新の内容に保つことが求められています。募集を終了したり内容を変更したりした場合は、速やかに求人情報の提供を終了する、または内容を変更する必要があります(※5)。
採用動画そのものが法令上の求人情報に当たるかどうかは、掲載のしかたによって判断が分かれます。しかし、候補者が応募を判断する材料として見る以上、実態と異なる描き方は避けるべきです。募集条件が変わったのに動画だけが古いまま残っている、という状態にも注意が必要です。
2. 労働条件の明示は、動画とは別に行う
労働条件の明示は、法令で定められた事項と方法にしたがって別途行う必要があります。動画の中で待遇にふれたことをもって、明示義務を果たしたことにはなりません。
なお、令和6年(2024年)4月からは、すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」についても明示することが必要になっています(※6)。動画で職務内容を紹介する際は、明示している内容と矛盾が生じないよう、人事担当者による確認をおすすめします。
3. 出演者の同意を書面で取得する
出演する社員からは、利用する媒体の範囲、利用期間、二次利用(SNS転載やリカット)の可否について、書面で同意を得ておいてください。退職後の取り扱いについても、あらかじめ取り決めておくと後のトラブルを防げます。私たちも、キャスティングを伴う制作では出演者からの許諾取得を制作フローに組み込んでいます。
4. 映像内に映り込む情報を確認する
オフィスの撮影では、モニターに表示された顧客名、ホワイトボードの案件情報、書類、社員証などが映り込みます。編集段階でのマスキングは可能ですが、撮影時に確認しておくほうが確実です。
当社の中途採用動画制作について
最後に、私たちがどのように中途採用動画をつくっているかをお伝えします。
有限会社北麓(HOKUROKU)は、企画・構成から撮影、編集、ナレーション、BGM、キャスティング、納品までを一貫してお受けしています。工程ごとに会社が変わらないため、初回のヒアリングで伺った狙いが、最後のカットまでブレずに残ります。
そして、私たち自身も中途採用を行っている当事者です。映像制作クリエイターの募集を出している立場として、「応募が来ない」「面接では良かったのに入社後にズレる」という悩みは、他人事ではありません。だからこそ、採用担当者の方が動画に何を託そうとしているのかを、同じ目線でお伺いできると考えています。
制作事例や対応領域についてはサービス紹介ページを、私たちの考え方については会社紹介ページをご覧ください。
まとめ
中途採用動画の作り方を、企画から運用まで通してお伝えしました。要点を整理します。
- 中途採用の候補者は「今の会社」という比較対象を持って動画を見ている。待遇・働き方・将来という三つの不安に答えることが出発点になる
- 国が中途採用比率の公表を求めているとおり、中途採用の実績は候補者の判断材料になる。ただし制度が求めているのは数字だけで、中身は企業が自分で伝えるしかない
- 何を見せるかは、「人材像と職務内容」「処遇とキャリアパス」「入社後の育成」の三項目から逆算できる
- 制作は、ゴールとなる感情の定義から始め、ターゲットを1職種まで絞り、ブロック構成で組み立てる
- 抽象語を固有名詞と数字に置き換え、うまくいかなかった話も一つ入れる。演出は実態を盛るためではなく、正確に伝えるために使う
- 出演者の退職を前提としたブロック構造にしておくと、公開後の差し替えに柔軟に対応できる
- 公開前に、実態との整合、労働条件明示との整合、出演者の同意、映り込みを必ず確認する
即戦力人材に刺さる中途採用動画は、映像のきれいさではなく、情報の具体性と誠実さで決まります。自社の魅力を「盛る」のではなく、正確に、伝わる形に翻訳すること。それが私たちが10,000本以上の制作を通じてたどりついた結論です。
採用動画のご相談は、まだ何も決まっていない段階でも
「動画を作るべきかどうか」から一緒に考えます。目的・予算・時期が固まっていなくても構いません。まずは採用の悩みからお聞かせください。
出典一覧
※1 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」(令和7年8月26日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html
※2 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」より「1 入職と離職の推移」「3 転職入職者の状況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/kekka_gaiyo-01.pdf https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/kekka_gaiyo-03.pdf
※3 厚生労働省「正規雇用労働者の中途採用比率の公表について」(労働施策総合推進法第27条の2。令和3年4月1日施行)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000737262.pdf
※4 厚生労働省「正規雇用労働者の中途採用比率の公表」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html
※5 厚生労働省「職業安定法 改正のポイント」(令和4年10月1日施行)https://www.mhlw.go.jp/content/001250179.pdf
※6 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」https://muki.mhlw.go.jp/rule.html


