新卒採用動画の作り方|Z世代に刺さるコンテンツ設計と成功事例

最終更新 : 2026年10月19日

Z世代は毎日2時間動画を見ている。10代の動画視聴時間は平日1日127分
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John Doe

北麓動画クリエイター
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採用動画をつくったのに、再生数が伸びない。最後まで見てもらえない。応募が増えない。新卒採用のご相談をいただくとき、最初に出てくるお悩みはたいていこの3つです。

私たち有限会社北麓(HOKUROKU)は、東京都渋谷区代々木を拠点に、TVCM・企業PR・採用動画からショートドラマまで、10,000本以上の映像制作に携わってきました。代表の藤橋俊昭が自らディレクター・プロデューサー・エディターとして現場に立ち、企画から撮影・編集・納品までを一貫して手がけています。

その現場から申し上げると、うまくいかない新卒採用動画には、演出以前の共通点があります。「この動画を見終わったとき、学生にどんな気持ちでいてほしいか」が決まらないまま撮影に入っていることです。

この記事では、新卒採用動画の作り方を企画から公開まで5つのステップで整理します。あわせて、Z世代の実際のメディア利用データ、当社が「感情設計」と呼んでいる構成の組み方、そして意外と見落とされがちな法務上の注意点まで、現場で使える形でお伝えします。

新卒採用動画が見られない本当の理由|Z世代のメディア行動から逆算する

学生は「動画に飽きている」のではなく「動画に慣れきっている」

まず、就職活動をする世代が普段どれだけ動画に触れているのかを、公的な調査で確認しておきます。

総務省情報通信政策研究所の調査によると、インターネット利用のうち「動画投稿・共有サービスを見る」時間の1日あたり平均は、10代で平日127.2分、休日166.1分。20代でも平日107.1分、休日151.0分にのぼります。全年代の平均が平日54.5分、休日73.1分ですから、就活生世代はおよそ2倍の時間を動画に使っている計算になります(※1)。

サービス別の利用率も明確です。同じ調査で、YouTubeの利用率は10代95.0%、20代96.3%。TikTokは10代67.9%、20代61.5%、Instagramは10代69.3%、20代82.6%となっています(※1)。

つまり学生は、毎日2時間以上、プロがつくった動画とアマチュアがつくった動画を無数に見比べている視聴者です。私たちは「動画に不慣れな人」ではなく「動画の目利き」に向けて作っている、という前提に立つ必要があります。

ここを取り違えると、「動画にすれば伝わるはずだ」という発想のまま、会社案内のパンフレットをそのまま読み上げただけの映像ができあがります。学生の目線では、それは数十本目に流れてきた退屈な1本にすぎません。

意外な事実:Z世代はインターネットの情報を最も信頼しているわけではない

もうひとつ、採用動画の設計を考えるうえで見逃せないデータがあります。

同じ調査で「メディアとしての信頼度」を尋ねたところ、10代では「テレビ」が55.7%で最も高く、「新聞」が47.1%、「インターネット」は33.6%でした。20代でも「テレビ」48.2%、「新聞」47.7%に対し、「インターネット」は28.9%です(※1)。

一方で「情報源としての重要度」では、10代の87.1%、20代の88.5%が「インターネット」を挙げています(※1)。

この2つのデータを並べると、若い世代のメディアとの付き合い方が見えてきます。彼らはネットを最も重要な情報源として使いながら、その情報を無条件には信じていないのです。

これは採用動画の役割を考えるうえで、決定的に重要な示唆です。動画は「信じさせる」メディアではなく、「気になる」を作るメディアだということ。学生は動画で心を動かされたあと、多くの場合、別の場所で裏を取ります。採用サイトの募集要項、口コミサイト、OB・OG訪問、面接での質問。そこで動画の印象と実態がずれていれば、そのずれこそが不信の材料になります。

だからこそ当社は、採用動画の企画の段階で「この動画のあと、学生はどこで何を確かめるか」まで一緒に設計します。動画で感情を動かし、その先の情報で納得を裏づける。この二段構えが崩れると、動画は逆効果になりかねません。

ミスマッチのコストは、実は数字ではっきり出ている

「そこまで丁寧に作る必要があるのか」というご質問をよくいただきます。厚生労働省の統計を見ると、その必要性がはっきりします。

令和4年3月に卒業した新規大学卒就職者の就職後3年以内の離職率は33.8%。およそ3人に1人が3年以内に離職しています(※2)。

さらに事業所規模別に見ると、この数字は企業規模によって大きく異なります。従業員1,000人以上の事業所では27.0%であるのに対し、100〜499人では33.9%、30〜99人では41.9%、5〜29人では52.0%と、規模が小さくなるほど高くなる傾向が明確です(※2)。

採用にかけた費用と時間、受け入れ後の教育コストを考えれば、「入社前に伝わっていなかった」ことの代償は決して小さくありません。採用動画の本当の役割は、応募数を最大化することではなく、入社後の「思っていたのと違う」を減らすことにあります。私たちはそう考えています。

新卒採用動画の作り方|企画から公開までの5ステップ

ここからは、当社が実際に新卒採用動画を制作するときの進め方を、5つのステップに分けてご説明します。一般的な制作フローと最も違うのは、最初のステップです。

STEP1:見終わった後の「感情」をゴールに置く

多くの制作フローは「目的を決める」から始まります。応募数を増やす、認知度を上げる、企業理解を深める。もちろん大切ですが、これだけでは映像の構成は決まりません。「企業理解を深める動画」からは、事業説明を並べた動画も、社員の1日に密着した動画も、どちらも導けてしまうからです。

当社では、初回のヒアリングで独自の「感情設計・逆算シート」を使い、まず次の問いに答えていただきます。

この動画を見終わった瞬間、学生にどんな気持ちでいてほしいですか。

答えは、抽象的でかまいません。「自分にもできそうだ、と思ってほしい」「この人たちと働いてみたいと感じてほしい」「ここでなら失敗しても大丈夫だと安心してほしい」。ここが決まると、逆算で必要なものが一気に見えてきます。

たとえば「自分にもできそうだ」がゴールなら、必要なのは会社の実績紹介ではなく、入社1年目の社員が最初につまずいた場面と、それをどう越えたかの具体的な描写です。「この人たちと働いてみたい」がゴールなら、必要なのは整った会議室でのインタビューではなく、社員同士が自然に笑い合っている数秒の映像かもしれません。

ゴールの感情が違えば、撮るべきものも、選ぶべき言葉も、音楽の入り方さえも変わります。逆に言えば、ここを決めずに撮影に入ると、編集の段階で「どのカットを残すべきか」を判断する基準がなくなります。修正が何度も往復する採用動画の多くは、実はこの入口でつまずいています。

実際にあった例です。ある案件で、当初は起承転結の構成で、最後にメッセージを置く予定でした。ところが撮影で語られたその最後のメッセージが、想定をはるかに超えて良かった。ゴールの感情から考えると、この言葉を最後まで取っておく理由がない。そう判断して、最終メッセージを冒頭に持ってくる構成に組み替えました。決めていたゴールがあるから、「構成の定石」より「この言葉を最初に届けること」を選べたのです。

STEP2:感情の流れを一本の線として設計する

ゴールの感情が決まったら、次はそこに至るまでの道のりを設計します。当社ではこの工程を「感情設計」と呼んでいます。

私たちが基本の型として使っているのは、次の流れです。

  • 違和感 — 冒頭の数秒で、予想を裏切る。想像していた「採用動画らしさ」から少しだけずらす
  • 好奇心 — なぜこうなっているのかを知りたくさせる
  • 理解 — 会社や仕事の輪郭がわかる
  • 共感 — 登場人物の迷いや葛藤に、自分を重ねる
  • 感動 — その人が何かを越える瞬間に立ち会う
  • 残響 — 余韻を残して終わる

多くの解説記事は5番目までで終わりますが、当社が最も重視しているのは6番目の「残響」です。

感情が最高潮に達した直後に、いきなりロゴとコーポレートサイトのURLが出て終わる採用動画は少なくありません。しかし人の記憶は、感情が動いた直後の静かな時間に定着します。だから当社は、クライマックスの後に意図的に数秒の「何も足さない時間」を置きます。音楽を落とし、テロップを消し、風景か、あるいは誰かの何気ない表情だけを見せる。

イベント映像やウェディングの「撮って出し」を数多く手がけてきた経験から、この終わり方の差が会場の空気をどれだけ変えるかを、私たちは何度も体感してきました。採用動画でも同じことが起きます。終わり方は、演出上のおまけではなく独立した設計工程です。

なお、冒頭の「違和感」は奇をてらうことではありません。たとえば社長のメッセージから始めるのではなく、入社2年目の社員が「正直、この会社に決めた理由、大したものじゃないんです」と話すところから始める。ただそれだけで、学生の姿勢は変わります。

STEP3:撮影は「本音が出る瞬間」を待つ時間として設計する

新卒採用動画の中核は、多くの場合、社員インタビューです。ここで最も難しいのは、機材でも照明でもなく、用意された答えではない言葉を引き出すことです。

事前に質問票を渡し、回答を準備してもらってから撮影すると、きれいで無難な言葉が返ってきます。学生には見抜かれやすくなります。かといって完全にぶっつけ本番では、話が散らかって使えません。

当社が現場でやっているのは、次のような進め方です。

  • 準備してきた答えは、まず一度そのまま話していただく(緊張を解くため)
  • そのうえで「いま話していただいた中で、いちばん大変だったのはどの場面でしたか」と一段掘る
  • 相手が言葉を探して黙り込んだら、待つ。ここで質問を重ねない
  • 沈黙のあとに出てきた言葉を、本編で使う

この「待つ」判断ができるかどうかは、その場でどのカットを使うか決められるかにかかっています。当社は代表が自らカメラの横に立ち、そのまま編集まで担当します。撮影しながら「いまの表情は本編の3分目に置ける」と判断できるため、必要な素材が揃ったかどうかをその場で見極められます。

これは、イベントやウェディングの当日撮影・当日編集・当日上映、いわゆる「撮って出し」で鍛えられた判断力です。撮りながら完成形が見えている状態でカメラを回すというのは、採用動画のインタビューでこそ効いてきます。

また、営業担当がヒアリングし、別のディレクターが撮影し、さらに別の編集者が仕上げる体制では、初回打ち合わせで決めたゴールの感情が現場に届くまでに薄まりやすくなります。当社が一貫体制にこだわっているのは、演出の好みではなく、この構造的な劣化を避けるためです。

STEP4:編集は「横型の本編」と「縦型のショート」を同時に設計する

Z世代への接触面はSNSですが、応募という意思決定は採用サイトで起こります。したがって新卒採用動画は、最初から2つの形が必要です。

  • 横型(16:9)の本編:2〜3分。採用サイト、会社説明会、YouTube向け。企業理解を深める役割
  • 縦型(9:16)のショート:15〜60秒。TikTok、Instagramリール、YouTubeショート向け。興味を持たせる役割

重要なのは、本編を作ってから切り出すのではなく、撮影前に分岐を設計しておくことです。

横型で構図を組んだ映像を無理に縦にトリミングすると、被写体が切れたり、背景の情報が失われたりします。テロップの位置も、縦型では画面下部がプラットフォームのUIに隠れるため、設計が変わります。撮影段階で「このカットは縦にも使う」と決めておけば、被写体を中央寄りに配置し、上下に余白を残して撮ることができます。

当社では、企画のコンテを作る時点で横型と縦型の両方の絵コンテを引きます。1回の撮影から、採用サイト用の3分版、SNS用の30秒版、会社説明会の冒頭で流すオープニング版まで展開できるのは、この事前設計があるからです。撮影は一度で済むため、費用も抑えられます。

当社の実例では、横型の本編を撮る時点でカメラの組み方を工夫し、同じ撮影から縦型のショート動画を切り出せるようにしています。小売・サービス業のある採用動画では、こうして本編とSNS向けショートを1回の撮影で納品しました。「このカットは縦用に押さえておこう」は当日の思いつきではなく、コンテの段階で決めておくものです。

STEP5:公開後は「どこで離脱したか」を見て次に活かす

納品して終わりにしないために、公開後は最低限、次の3点を確認してください。

  • 視聴維持率:どの秒数で離脱が多いか。冒頭10秒で大きく落ちていれば「違和感」の設計が弱い
  • 完全視聴率:最後まで見た人の割合。ここが低ければ、中盤の情報量が多すぎる可能性がある
  • 動画からの遷移:動画を見た人が、エントリーページや募集要項まで進んでいるか

新卒採用は毎年繰り返される活動です。1年目のデータをもとに翌年の構成を微修正していけば、動画は資産になります。逆に作りっぱなしにすると、3年後には社員の顔ぶれも制度も変わり、まるごと作り直しが必要になります。

Z世代に刺さるコンテンツ設計|新卒採用動画で機能する3つの型

新卒採用動画には無数の見せ方がありますが、当社が実際にご提案することが多いのは次の3つの型です。それぞれ、届く相手と得意な感情が異なります。

型1:社員ドキュメンタリー型(2〜3分・横型)

一人の若手社員に焦点を当て、入社の経緯、最初の壁、いまの仕事までを追う構成です。もっとも汎用性が高く、採用サイトの中核に置く1本に向いています。

  • 向いている感情のゴール:「自分にもできそうだ」「この人と一緒に働きたい」
  • 成否を分けるポイント:選ぶ社員が、完璧な優等生ではないこと。学生が重ねられるのは、成功している人ではなく、迷った経験のある人です
  • 注意点:社員の在籍が前提になるため、退職時の差し替えを想定した構成にしておく

型2:ショートドラマ型(60〜90秒・縦型)

物語仕立てで、企業のカルチャーや価値観を体験させる型です。SNSでの拡散を前提としたときに最も相性がよく、当社ではショートドラマ広告の制作で培った脚本・キャスティング・演出のノウハウをそのまま採用領域に応用しています。

  • 向いている感情のゴール:「なんだこの会社は、もっと知りたい」
  • 成否を分けるポイント:企業からのメッセージを、登場人物のセリフとして直接語らせないこと。物語の出来事として体験させる
  • 注意点:実在の社員に演技を求めるとかえって不自然になりやすいため、モデルや俳優のキャスティングを検討する。当社はモデル・インフルエンサー・声優のキャスティングを自社で行えるため、企画段階から配役を含めてご提案できます

型3:1日密着型(30〜60秒・縦型を複数本)

朝の出社から退社までを、実際の社員の視点で細かく見せる型です。1本ずつは短く、職種別に複数本を制作して連投します。

  • 向いている感情のゴール:「働いている自分が具体的に想像できる」
  • 成否を分けるポイント:オフィスの外観や会議室ではなく、机の上、ランチ、移動時間といった日常の細部を撮ること
  • 注意点:見せる情報がそのまま入社後の期待値になるため、たまたま良い日を切り取らない

3つの型は排他的ではありません。実務では、本編にドキュメンタリー型を置き、SNSには1日密着型を複数本流し、認知の入口としてショートドラマを1本作る、といった組み合わせが有効です。前述のとおり、撮影を1回にまとめれば費用は分散できます。

新卒採用動画で必ず押さえたい法務・表示のポイント

ここは他の解説記事であまり触れられませんが、採用動画は「募集活動の一部」である以上、法令の適用を受けます。制作会社としてご案内している内容を、根拠とあわせて整理します。なお、個別の案件については社内の法務担当者や専門家にご確認ください。

「盛る」ことのリスク:職業安定法の的確な表示義務

職業安定法第5条の4第1項は、労働者の募集を行う者などが、広告等により労働者の募集に関する情報を提供するときは、その情報について虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています(※3)。

採用動画そのものが直ちに「募集広告」に当たるとは限りませんが、動画と募集要項を一体のものとして学生に示している場合、この規律を意識しておくのが安全です。

実務上とくに注意したいのは、次のような表現です。

  • 一部の部署だけの制度を、全社の制度であるかのように見せる
  • 例外的な早期昇進の事例を、標準的なキャリアパスとして描く
  • 残業がほとんどない部署の風景だけで、会社全体の働き方を印象づける

いずれも嘘をついているわけではありません。しかし「誤解を生じさせる表示」に近づきます。採用動画は感情に働きかけるメディアである分、この境目に立ちやすいという自覚が必要です。

私たちが構成案を確認するとき、「この映像だけを見た学生が持つ印象と、入社後の実態がずれないか」を必ず一度立ち止まって確認しているのは、そのためです。採用動画での誇張は、離職率という形で自社に返ってきかねません。

新卒採用ならではの義務:若者雇用促進法の職場情報提供

新卒採用に特有のルールとして、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)があります。

厚生労働省の資料によれば、新卒者等の募集を行う企業に対しては、企業規模を問わず、幅広い職場情報の提供が努力義務とされています。さらに、応募者等から求めがあった場合には、次の3類型それぞれについて1つ以上の情報を提供することが義務とされています(※4)(※5)。

類型 情報の内容
(ア) 募集・採用に関する状況
(イ) 職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況
(ウ) 職場への定着の促進に関する取組の実施状況

この制度は、新卒段階でのミスマッチによる早期離職を解消するため、労働条件を的確に伝えることに加えて、就労実態などの職場情報もあわせて提供する仕組みとして設けられたものです(※4)。

ここに、採用動画の設計上の大きなヒントがあります。法律が求めている情報の3類型は、学生が知りたいことと大きく重なっているからです。制度そのものが、早期離職の解消を目的として設計されているためです(※4)。

  • (イ)の研修・育成は、「入社後どう成長できるか」への答え
  • (ウ)の定着に関する取組は、「長く働けるか」への答え

事業内容や企業理念だけを語る採用動画が響きにくいのは、学生が知りたい層の情報に届いていない可能性があるからです。当社が構成をご提案するとき、育成の実態と職場の日常を必ず入れるようお願いしているのは、法令対応のためだけではなく、それが学生の関心そのものだからです。

出演する社員の権利:肖像と、退職後の取り扱い

社員に出演していただく以上、肖像の取り扱いは避けて通れません。

肖像権については、法律上の明文の規定はなく、裁判例によって認められてきた権利です。多くの裁判例は、みだりに自分の肖像を撮影されたり、撮影された写真をみだりに公開されない権利と解しています(※6)。

明文がないからこそ、実務では書面での合意が重要になります。当社では、出演にあたって最低限、次の点を書面で確認しています。

  • 使用する媒体の範囲(採用サイト、SNS、会社説明会、展示会など)
  • 使用する期間
  • 退職した場合の取り扱い

とくに3点目は、新卒採用動画で最も多いトラブルの種です。動画に登場していた社員が退職した後もその映像が採用サイトに残り続けている、という状態は、学生にとっても、退職された本人にとっても好ましいものではありません。

そのため当社では、退職者が出たときに部分的に差し替えられる構成をあらかじめ組んでおくことをご提案しています。一人の社員を全編の主役に据えるのではなく、章を分けて複数の社員で構成しておけば、該当パートだけを撮り直して差し替えられます。撮影時に予備のカットを押さえておくことも有効です。

完成した動画の著作権は、自動的には自社に移らない

見落とされがちですが、実務上の影響が大きい点です。

文化庁の資料では、著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合、料金を支払ったかどうかにかかわりなく、実際に著作物を創作した「受注者側」が著作者となると説明されています。また、著作者人格権は譲渡できず、財産権である著作権は許諾または譲渡ができる、とされています(※7)。

つまり、制作費を支払っただけでは、完成した映像の著作権が自動的に発注者に移るわけではありません。契約で定めていなければ、後から自社でリカットしてSNSに転用する、翌年の説明会向けに編集し直す、といった二次利用の際に、あらためて確認が必要になる場合があります。

当社では見積もりと契約の段階で、著作権の帰属、二次利用の可否と範囲、撮影素材データの取り扱いを明記しています。将来リカットする可能性があるなら、契約時にその範囲まで含めて決めておくのが最も確実です。新卒採用動画は数年にわたって使うものですから、ここは初回の契約時に一度きちんと詰めておく価値があります。

成功事例に共通する条件と、失敗する新卒採用動画の共通点

うまくいっている新卒採用動画に共通する3つの条件

これまで多くの企業の採用動画に携わってきた経験から、成果につながっている動画には共通点があります。

1. 会社ではなく、人が主語になっている

「当社は、創業以来◯◯を大切にしてきました」で始まる動画と、「入社したとき、正直ここでやっていけるか不安でした」で始まる動画では、最後まで見られる割合がまるで違います。学生が知りたいのは会社の歴史ではなく、自分と同じような人がそこでどう働いているかです。

2. 都合の悪いことにも触れている

繁忙期は忙しい、最初の半年は覚えることが多い、地方勤務の可能性がある。こうした点に正直に触れている動画のほうが、結果的に信頼されます。前述のとおり、学生はネットの情報を無条件には信じていません。良いことしか言わない動画は、それ自体が疑いの対象になります。

3. 動画の役割が1つに絞られている

1本で認知も理解も応募促進もすべて担わせようとすると、どの目的も達成できません。認知はショート、理解は本編、と役割を分けた企業のほうが、結果として全体の成果が上がっています。

失敗する新卒採用動画の共通点

逆に、思うような結果が出なかった動画にも、はっきりした共通点があります。

  • 社内の合意形成のために作られている:経営層、各部署、人事の要望をすべて盛り込んだ結果、誰にも刺さらない総花的な内容になる
  • 感情のゴールが決まっていない:編集段階で判断基準がなく、修正が延々と往復する
  • 尺が長すぎる:「せっかく撮ったから」と全部入れた結果、5分を超えて最後まで見てもらえない
  • 公開先を決めずに作っている:横型しかない状態でSNS展開が必要になり、後から無理にトリミングして画づくりが崩れる

いずれも、STEP1とSTEP2の設計を飛ばしたときに起きる現象です。撮影に入る前の、机の上での時間が、実は最も成果を左右します。

制作費用・スケジュール・社内体制の考え方

費用は「相場」ではなく「構成」で決まります

「新卒採用動画の相場はいくらですか」というご質問を、ほぼ毎回いただきます。正直にお答えすると、公的な統計はなく、単一の相場を示すことはできません。同じ3分の動画でも、費用は次の要素で大きく変わります。

  • 撮影日数:1日で撮り切るか、複数拠点をまわるか
  • 出演者:社員のみか、モデル・俳優をキャスティングするか
  • ロケーション:自社オフィス内か、屋外ロケや地方への出張撮影が必要か
  • 表現手法:実写のみか、アニメーションやモーショングラフィックスを併用するか
  • 納品本数:本編1本か、複数尺・複数比率への展開を含むか
  • ナレーション・音楽:ナレーターを起用するか、既存ライブラリを使うか

そのため当社では、見積もりの前に必ずヒアリングの時間をいただき、企画の方向性が固まってから全工程の費用を提示しています。工程ごとに小分けの見積もりを出す方式ではなく、企画から納品までを含んだ総額でお出しするため、後から想定外の追加費用が発生しにくい形にしています。

予算に上限がある場合も、遠慮なくお伝えください。予算を先に共有していただいたほうが、その範囲で成果が最大になる構成を組めます。限られた予算のなかでは、撮影を1日に集約し、その素材から複数フォーマットへ展開する設計が最も効率的です。

スケジュールは「社内の意思決定」が律速になります

制作期間についてよくある誤解は、撮影と編集に時間がかかる、というものです。実際に日程が延びる原因として多いのは、社内の確認と承認に要する時間です。

新卒採用動画を採用広報の解禁に間に合わせたい場合、逆算して次の点を先に固めておくと、進行が安定します。

  • 誰が最終決裁者か:構成案と初稿を、誰の承認をもって確定とするか
  • 出演者の確保:候補社員の選定と、上長の了承、撮影日の確保
  • 確認のタイミング:構成案、絵コンテ、初稿、修正稿の4回で、それぞれ何営業日で戻せるか

当社は代表が直接プロジェクトを管理する少数精鋭の体制のため、社内の意思決定が速く、急なスケジュール変更にも動きやすい構造になっています。ただし、クライアント側の確認が滞れば全体の日程は後ろにずれます。ここは私たちだけでは短縮できない部分です。

何も決まっていない段階でのご相談を歓迎しています

「動画を作りたいが、何をどう作ればいいかわからない」という状態こそ、実は最も相談していただきたいタイミングです。方向性が固まる前にお話しできれば、感情のゴールから一緒に設計できます。すでに構成が決まってから制作会社を探す場合、その構成が最初のボタンを掛け違えていても、もう直せないことがあります。

当社は「とりあえず相談だけでも大丈夫ですか」というお声も大歓迎です。代表自らが初回のヒアリングに入り、御社の言葉の奥にある想いや背景まで伺ったうえで、企画の方向性をご提案します。

新卒採用動画についてよくあるご質問

Q. 動画の長さはどのくらいが適切ですか。

用途によって変わります。採用サイトに置く本編なら2〜3分、SNS向けの縦型なら15〜60秒が目安です。1本で全部を担わせず、役割ごとに尺を分けるほうが結果的に成果が出ます。

Q. 社員の出演をお願いしにくいのですが、どうすればいいですか。

出演のハードルを下げる工夫がいくつかあります。カメラ目線のインタビューではなく、作業中の様子や同僚との会話を撮る形にする、顔出しを避けて手元や後ろ姿と音声で構成する、あるいはモデル・俳優をキャスティングしてドラマ形式にする、といった選択肢があります。当社はキャスティングまで自社で対応できますので、企画段階でご相談ください。

Q. 撮影した素材データはもらえますか。

契約時に取り決めます。将来の再編集を想定されている場合は、素材データの提供と保管期間について、最初の見積もり段階でご相談ください。

Q. 修正には何回まで対応してもらえますか。

見積もり段階で修正の範囲と回数を明示しています。当社は感情のゴールを最初に確定させてから制作に入るため、初稿の時点で意図に近い仕上がりになりやすく、大幅な修正が発生しにくいのが特徴です。

Q. 東京以外での撮影にも対応していますか。

対応しています。地方拠点や工場での撮影実績もあります。出張が伴う場合の交通費・宿泊費については、見積もりの段階で内訳を明示します。

まとめ

新卒採用動画の作り方を、企画から公開まで整理してきました。最後に要点を振り返ります。

  • 就活生世代は毎日2時間前後を動画に費やす「動画の目利き」であり、同時にネットの情報を無条件には信じていない。動画の役割は「信じさせる」ことではなく「気になる」を作ること
  • 制作の出発点は、目的でもターゲットでもなく「見終わった後にどんな感情でいてほしいか」。ここが決まると、撮るべきものと捨てるべきものが決まる
  • 感情は、違和感から始まり、共感を経て、余韻で終わる一本の線として設計する
  • 撮影は1回にまとめ、企画段階から横型の本編と縦型のショートに分岐させて設計する
  • 職業安定法の的確な表示義務、若者雇用促進法の職場情報提供、出演者の肖像、著作権の帰属。この4点は制作前に押さえておく
  • 誇張は離職率という形で自社に返ってきかねない。採用動画の本当の役割は、入社後の「思っていたのと違う」を減らすこと

私たち有限会社北麓(HOKUROKU)は、映像を単なる情報伝達ではなく、見る人の感情が動いていく体験だと考えています。企画から撮影・編集・キャスティングまでを自社で完結させ、代表自らが現場に立つのは、御社の想いが薄まらないまま学生に届くようにするためです。

新卒採用動画は、一度作れば数年にわたって採用活動を支える資産になります。だからこそ、最初の設計を一緒に考えさせてください。

採用動画のご相談は、まだ何も決まっていない段階でも

「動画を作るべきかどうか」から一緒に考えます。目的・予算・時期が固まっていなくても構いません。まずは採用の悩みからお聞かせください。

お問い合わせ制作事例を見る

監修

藤橋 俊昭 (有限会社北麓 代表取締役)

映像制作歴25年。採用動画・企業紹介動画の企画から撮影・編集までを一貫して手がけ、独自メソッド「感情設計」に基づく現場ヒアリングと構成設計で、数多くの企業の採用課題解決に携わる。北麓について

※本記事の法令に関する記述は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。具体的な運用は専門家にご確認ください。

出典一覧

※1 総務省情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」(令和8年6月公表。調査対象期間:令和7年12月1日〜7日、13〜79歳の男女1,800人)https://www.soumu.go.jp/main_content/001079136.pdf

※2 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」(令和7年10月24日公表)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html

※3 厚生労働省「労働者の募集広告には、『募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金』の表示が必要です」(職業安定法第5条の4に基づく周知)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00006.html

※4 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について」(2025年3月版リーフレット/LL070328開若08)https://jsite.mhlw.go.jp/miyazaki-roudoukyoku/content/contents/002482764.pdf

※5 厚生労働省「職場情報の提供制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122234.html

※6 デジタルアーカイブ学会「肖像権ガイドライン〜自主的な公開判断の指針〜」(2021年4月/2023年4月補訂)https://digitalarchivejapan.org/wp-content/uploads/2023/04/Shozokenguideline-20230424.pdf

※7 文化庁著作権課「令和6年度 著作権事務担当者講習会『著作権制度の概要について』」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/seminar/2024/pdf/94088901_01.pdf

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